新海誠監督の『天気の子』、残念ながら7/19(金)0時の最速上映は外れてしまいましたので、TOHOシネマズ日比谷で朝9時上映分を観てきました。
ちなみに館内に入っていくお客さんをテレビカメラで撮影してました。
朝一の上映にも関わらずほぼ満席。みなさん期待してるようです、私も含め。
あらすじ
森嶋帆高(声:醍醐虎汰朗)は高1の夏、離島から家出して東京にやってくる。しかし生活に困窮し、怪しげなオカルト雑誌のライター業の仕事に就く。彼のこれからを示唆するかのように、連日雨が降り続くなか、都会の片隅で帆高はひとりの少女に出会う。その少女・陽菜(森七菜)はある事情を抱え、弟とふたりでたくましく暮らしていた。そんな彼女には、祈るだけで空を晴れにできる不思議な能力があった……。
出典元:MovieWalker
感想・考察
帆高の愛読書「キャッチャー・イン・ザ・ライ」
帆高が東京にやってきてマンガ喫茶に泊まっているシーンで出てくるのが、村上春樹翻訳の「キャッチャー・イン・ザ・ライ」。
J・D・サリンジャーが書いた青春小説の古典的名作です。
「キャッチャー・イン・ザ・ライ」のあらすじをちょっと見てみましょう。
主人公ホールデンは高校に下宿しながら通う16歳の高校生。しかし、成績不良で退学処分になってしまいます。退学になるのはこれで3校目です。
ホールデンは学校を追い出される前に自分から出ていくことを決意し、生まれ故郷のニューヨークに戻ります。かつての先生や昔のガールフレンドなどと会ったり、娼婦を買ったりもしますが、心は満たされません。
そんなホールデンにも大事な存在がいました。10歳の妹フィービーです。気分の落ち込んだホールデンは妹のフィービーに会いに行きます。そして、街を出ていくことを告げます。
しかしホールデンが学校を追い出されたことを知ると、とても頭の回転が早いフィービーは「結局兄さんは何になりたの?」とホールデンに問い詰めます。ホールデンは「ライ麦畑で遊んでいる子どもたちが、崖から落ちそうになったときに捕まえてあげるライ麦畑のキャッチャーのようなものになりたい」と言います。
そしてニューヨークを出て行く日の朝、ホールデンの前にフィービーがあらわれ「兄についていく」と泣きながら言います。ホールデンの気持ちは変わらなかったものの、フィービーを泣き止ませるために動物園に入ります。
回転木馬に乗ったフィービーを降りだした雨の中で眺めたとき、ホールデンは強い幸福感を覚え、家を出ることを思いとどまるのです。
『天気の子』との関係を見てみます。
満たされない心
「キャッチャー・イン・ザ・ライ」の主人公ホールデンは、社会や大人は欺瞞・建前にあふれていると考え、社会や他人とうまく折り合いをつけることができず、学校からも追い出されてしまうんです。
帆高も境遇的に似ていると考えられます。
島という閉鎖的な環境、折り合わない親との関係、理想と現実の乖離など子供と大人の中間にいるティーンエイジャーにありがちな状況ではあるものの、そんな満たされない状況で出会った「キャッチャー・イン・ザ・ライ」をバイブルとみなして島を飛び出し東京でひとり暮らそうとしたのでしょう。(ちなみに神津島も東京なんですけどね。)
ライ麦畑のキャッチャー
ホールデンがなりたいと言った「こどもが崖から落ちそうになったときに捕まえてあげるライ麦畑のキャッチャー」も隠された重要な伏線と考えられます。
欺瞞・建前とは対極にある純粋無垢なこどもを愛するホールデンは、こどもを守るべき存在でいたいと考えていました。
『天気の子』では、瀧のおばあちゃん家での初盆についての会話で、彼岸は空の上にあるという話が出ます。実際、陽菜が地上から姿を消したときにいたのは、雲の上の草原のような場所。その縁は、崖のようになっています。
帆高が廃ビル屋上の鳥居から助けに行ったとき、彼岸の縁から落ちそうになる陽菜を捕まえます。
年上だと思っていた陽菜が実際には年下で、ホールデンと自分を重なり合わせている帆高にとっては、陽菜を守ってあげるべき存在であろうとしたに違いありません。
身近な人の幸せ
また、「キャッチャー・イン・ザ・ライ」のラスト、ホールデンは雨の中で回転木馬に乗る愛しい妹を見て幸福感を感じ、どこへも行かずフィービーのそばにいることを決意します。
また「キャッチャー・イン・ザ・ライ」には以下のような詩がでてきます。
未成熟な人間の特徴は、理想のために高貴な死を選ぼうとするこれに反して成熟した人間の特徴は、理想のために卑小な生を選ぼうとする点にある(出典元:『ライ麦畑でつかまえて』)
帆高にとってみれば、高貴な死とは、陽菜を犠牲にしてみんなのために晴れさせる ということと捉えられる。この時の理想=晴れである。
一方卑小な生とは、雨は降り続けるが陽菜は生きている という状態で、理想=陽菜が生きていること。
ティーンエイジャーなど大人になり切れていない未成熟な人間の場合、社会や他人とうまく折り合いをつけられないからこそ、社会から認められたいと考えて高貴な死を選択しがち。
でも社会という大きな世界に目を向けるよりも、ホールデンがフィービーのもとに残ったように、もっと身近な存在である陽菜に目を向けられた帆高は一歩大人に近づきました。
時期的なもの
公開時点から見ると未来のお話のようです。
物証1 入学式の写真
陽菜の家に帆高を探しに来た刑事が持ってきた写真です。
高校の入学式の写真でしょう、「令和三年度」と写ってました。
少なくとも令和三年(2021年)もしくはそれより未来の話と言うことがこの時点で判明。
物証2 K&Aプランニングのカレンダー
帆高が高校卒業した年に訪れたK&Aプランニング。3年前より立派になってる(笑)
そこのカレンダーですが、卒業した月なので3月になってます。
よく見ると、3月3日が日曜日のカレンダー。
調べてみると、令和六年(2024年)3月3日が日曜日。
帆高は学校さぼってたくせにちゃんと3年で高校卒業したようです。
『君の名は。』とのつながり
『君の名は。』から数名出てましたね。
立花瀧は見逃しようもなくわかります。
曳舟に住む瀧のおばあちゃんとともに登場。
おじいちゃんの初盆を天気にしてほしいという依頼で帆高・陽菜・凪の3人が訪れます。
瀧が出てきた瞬間、劇場内が「おおっ!」となりました(笑)
続いて宮水三葉。
ちょっとわかりづらかったですが、名字がはっきり映りました。ローマ字でしたけど。
陽菜にあげる誕生日プレゼントとして指輪を買ったお店の店員さん。
ただの店員としてはセリフもちょっとありました。
最後は宮水四葉。
すんません、まったくわかりませんでした。。
エンドロールで名前が出てきたのを見て、「見逃したー」と悔しい思い。
『君の名は。』とは関係ないけど、ソフトバンクのお父さん犬も出てたんでしたね。
まったくわかりませんでした。探してもないけど。
おわりに
ストーリーが終わったとき、劇場内で拍手がおこったんですよね。
私はその場で一緒に拍手できるほど、面白かったのかどうかよくわかりませんでした。
『君の名は。』の時は観終わってすぐ、もう1回観ようと思うほどでしたが(結局もう5回観たけど)、『天気の子』は正直そこまでではなかった。
期待が大きすぎたのかもしれない。
もう1度観てみようかな。四葉も見つけたいし。