くろログ

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【映画】『カセットテープ・ダイアリーズ』感想・評価(ネタバレあり)

ブルース・スプリングスティーン、名前は知ってるんですが歌はまったく聞いたことない。

そんな俺でも、ブルース・スプリングスティーンのロックに乗って明日に走りだしてぇー!という希望を胸に秘めつつ、『カセットテープ・ダイアリーズ』見てみました。

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あらすじ

1987年、イギリスの小さな町に住むパキスタン移民のジャベド。9月にハイスクールへ入学する彼は、幼なじみのマットに恋人ができたことで孤独を感じていた。さらに、移民に対する偏見やパキスタン家庭の伝統に不満を抱き、古い慣習を振りかざす父親には強い反発心を感じていた。そんなある時、すべてのモヤモヤを吹き飛ばしてくれるブルース・スプリングスティーンの音楽に出会い、ジャベドは衝撃を受ける。

出典元:MovieWalkerPress 

感想

ティーンエイジャーのモヤモヤ 

パキスタンからの移民である主人公ジャベド。

近隣の若者からは「パキスタン移民は出ていけ」と落書きをされたり、白人のこどもからは郵便受けから家の中に立ちしょんされたりと、移民に対する偏見を日常的に受ける。

また、家族のなかでは、父親以外が意見を持つことが許されない。故郷パキスタンを離れ自動車工場で働いて家族を支えてきた父親は、自分と同じ道を歩んでほしくなく、息子の将来を考え、学歴と品行方正な生活を強いていました。進学先や結婚相手も父親の決めたとおりにしかならないであろう将来を考えてしまい、強く反発心を持つジャベド。

しかも近くに住む白人の幼なじみのマットには恋人もでき、父親からの理解もあり、ジャベドからはうらやましく見えてしまい、孤独すら感じてしまう。

 

ってか、程度の違いはあれど、家族からの反発や孤独感って、ティーンならだれでも経験するものですよね。

私も父親に対してはいろんなことで反発してました。とくに進路とか。

 

ブルース・スプリングスティーンの音楽との出会い

そんな中、父が会社を解雇されてしまいます。

10歳から書いていた日記や詩を活かし、作家の道に将来進みたいジャベドも家族をさせるために働かざるを得ません。

自暴自棄になったジャベドは、詩なんて何の役にも立たないと、今まで書き溜めてきたものをすべて捨ててしまいます。

ただそこで、友人から借りたブルース・スプリングスティーンのテープがカバンから偶然出てきます。

ウォークマンにテープを入れて聞き始めるジャベド。

曲は「ダンシン・イン・ザ・ダーク」。

”じっとしていたら、火は起こすことなんてできない”

今まで自分が感じてきていたことがダイレクトに表現されていた歌詞に衝撃を受け、励まされた彼は捨てた詩を拾い集めます。自分の夢に向きあっていこうと決意するんですね。(ブルース童貞を捨てたな、と友人から言われてました(笑))

 

「バッド・ランド」という曲には以下のような歌詞があります。(映画の冒頭にも実は出てきていました。)

”夢を語るなら、実現するよう行動しろ”

隣人が詩を褒めてくれたり、高校新聞に寄稿したりし、自分の夢に向かって一歩一歩進んでいきます。毎日が劇的に変わっていきます。

 

音楽の力って、すごいですよね。

映画のなかだけでなく、現実世界においても、勇気をもらったり、悲しみを癒してくれたり。(洋楽でも歌詞の意味を調べて理解したうえで聞けると、さらによいですね。)

 

でも、ただ自分の希望をかなえるだけじゃない!

なんとなく観る前は、音楽に勇気づけられて、自分の希望を実現させるストーリーなんでしょ、と勝手に予想してました。(実際そういう映画でも元気は出るし、それでも良いとは思ってるんですが。)

でもこの映画、それだけじゃなかった。。

いい意味で予想を裏切ってくれます。

 

ジャベドはマンチェスターの大学で、作家になるための勉強がしたいと思ってますが、「身の程を超えた夢を追うな」と、まだ父親は認めてくれない。

卒業の日、ジャベドは優秀な生徒として表彰され、スピーチを依頼されます。彼の作品が評価されたんですね。ただ、小さな町を出て自分の夢だけをかなえるという作品を書いた時とは、ちょっと考えが変わってきています。

 

ブルース・スプリングスティーンには『Blinded By The Light』(光に目もくらみ)という曲があります。(この映画の英語での題名でもあります。)

イギリスにきても夢がかなわず怒りを抱えた父親も自分と実は同じということが、自分の将来という光で目がくらみ見えていなかったと、感じたジャベド。

父親は何のために自分と同年代の時にパキスタンを出てイギリスへ移住し、懸命に働いていたのか?仕事を失ってからも必死に仕事を探す父親の姿。

自分は決してひとりではなく、家族や友人もいて、その人たちの支えのもと日々暮らしている、ということに気づいたんですね。

最後、ジャベドが言います。

”僕の夢は家族との間に壁を作らず、自分の願望への橋を架けることだ”

 

最後には、父親も

”お前の物語を書け、我々も忘れるな”

と応援してくれてます。

 

いいですね。胸に響きます。

たとえ夢をかなえたとしても、自分ひとりだけでは生きていくのはきっとつらいですよね。

家族や友人とともに夢をかなえられれば、つらいことがあったとしても、乗り越えられそうな気がします。

 

そもそもブルース・スプリングスティーンってどんな人?

最後にブルース・スプリングスティーンについて。

ブルース・スプリングスティーンは、アメリカを代表するロックミュージシャンとして世界に名を知られ、全世界で1億30000万枚以上のレコードセールスを記録。

1970~80年代あたりは、時代に翻弄される若者の心の内を代弁するような作品、最近では社会的なテーマを織り込んだ作品が多いようです。

1999年にはロックの殿堂入り。

ローリングストーン誌「歴史上もっとも偉大な100組のアーティスト」では第23位、「歴史上もっとも偉大な100組のシンガー」では第36位として選出されてます。

グラミー賞は20回、アカデミー賞(映画)、トニー賞(舞台)も受賞。

2019年にはアルバムも出しているようです。

恐るべき経歴ですね。

 

映画の中では以下の楽曲が使われてます。

  • 明日なき暴走(Born To Run)
  • ザ・リバー(The River)
  • 涙のサンダーロード(Thunder Road)
  • ハングリー・ハート(Hungry Heart)
  • ダンシン・イン・ザ・ダーク(Dancing In The Dark)
  • 光で目もくらみ(Blinded By The Light)      などなど

作中には未発表曲である、アイル・スタンド・バイ・ユー(I'll Stand By You)もでてきます。

 

この『カセットテープ・ダイアリーズ』、時代は1987年。

しかもその当時でさえ、ブルース・スプリングスティーンは親の世代が聞いていたもののよう。

でも時代が違っても、ブルース・スプリングスティーンの歌詞が心に刺さってきます。

尽き刺さる歌詞をちょっと挙げてみます。

  • 夢を語るなら、実現するよう行動しろ(『バッド・ランド』)
  • かなえられなかった夢は偽りなのか?それとももっと悪いものなのか?(『ザ・リバー』)
  • 彷徨うものは走るために生まれてきたんだ(『明日なき暴走』)

 

これを機にブルース・スプリングスティーン聞いてみようかな、と思わせてくれますね。

 

さいごに

ちょっとだけ恋愛シーンもあるんですが、自作の詩をカーテン開けると見えるように窓に貼ってくっていうのがオタクっぽいロマンチックさがあらわれてて、クスっとしてしまいました。

 

ちなみに最初のデートからジャベドが帰ろうとした際に聞いてた曲が何だったのかが気になる。。

彼女から「帰っちゃうの?」って聞かれて、その時に聞いてた曲で、歌詞に後押しされて帰らず初キスに、、というとこ。

「欲しければつかめ、代償を払っても」みたいな歌詞だったとおもうんだけど。。気になる。。

hulu